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宮崎地方裁判所 昭和56年(わ)116号 決定

【主文】本件準抗告を棄却する。

【理由】

申立の趣旨 原裁判の是正。

申立理由 別紙(二)のとおり。

判断 別紙(一)のとおり本件準抗告は不適法である。

(吉川義春 三谷博司 白石研二)

別紙 (一)

一、検察官の本件準抗告は要するに被疑者の勾留を認めた裁判に対しその理由として勾留の必要を刑訴法六〇条一項三号の被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由のみを挙げ、同条項二号の罪証を隠滅すると疑うに足る相当な理由があるときを挙げないのを不服とするものである。

二、ところで、刑事訴訟法四二九条一項は、裁判官が勾留の裁判をした場合において、不服がある者は、その裁判の取消又は変更を請求することができる旨を規定している。そして、ここにいう「裁判の取消又は変更」とは勾留の許否を決する勾留の裁判の主文ともいうべき部分を指し、勾留を認める裁判では、被疑者に対する特定の被疑事件について、同人を特定の場所に勾留する旨の裁判を指すのでありこの勾留又は、勾留の場所の取消し、変更を求める場合に限り同条項所定の準抗告が許されるものである。

したがつて、右の勾留の裁判の主文の理由とされている勾留の必要を示す事由の変更は前同条の勾留の裁判の変更にあたらない。

三、刑訴法六〇条一項各号の勾留の必要の事由は時の経過とともに変動的なものであるから、勾留延長ないし、勾留期間の更新あるいは保釈の当否を決する裁判の際には勾留の裁判の事由に拘束されることなく、改めてその事由の存否を判定して差支えないと考えるとすればたとえ検察官主張のように罪証隠滅のおそれがあつたとしても、本件被疑者につき勾留の裁判がなされ、検察官においてこれを執行指揮して被疑者の身柄を拘束して留置している現時点において、被疑者に罪証隠滅のおそれはなく、その事由の追加を求める検察官の本件準抗告はその利益がない。

四、よつて、本件準抗告は不適法であつて、これを棄却することとする。

別紙 (二)

一、本件に関し被疑者が本件被疑事実を犯したことを疑うに足りる相当の理由があること及び刑訴法第六〇条第一項第三号に該当する事由があることは被疑者が自白しており、かつ被疑者について、刑訴法第六〇条第一項第三号に該当するとして勾留状が発付されていることから明かである。

二、更に本件については被疑者に罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある。

1 被疑者は、本件手形を担保に借受けた三〇万円につき、一五万円は後藤建設に対する借金の返済に充て、残り一五万円は子供を連れての大阪行きの旅費に充てたと供述し、また、右借金返済と旅費工面のため、本件手形を横領した旨その動機を述べる。しかし右旅費のことについては、未だ裏付はとられておらず、かつこのことは情状の点ばかりでなく、横領の犯意にも影響する事由であつて、右の点につき家族等に明示、黙示の働きかけ、あるいは通謀等して罪証を隠滅する虞が大である。右裏付けは家族であるため右の虞は容易にうかがわれる。

2 本件手形が発見されていない。

被疑者は本件手形を結局捨ててしまつたか、米田建設に渡している筈だと供述するが、しかし現在までの捜査の結果ではいずれとも確定できず、かつ右以外の場所に割引きに出された可能性も大である。本件手形は被疑者の犯意を裏付ける重要な証拠である(何故ならば被疑者は本件犯行後、本件手形を藤本一志に三〇万円を返済し、手形を取戻した上、それを五五年四月一〇日満期の被害者振出手形と差し換えるため、右藤本に渡した旨供述しているのであつて右の供述からは本件横領は一時使用にすぎず、結局被害者のために差し換え手形として使用しているという弁解も成り立ち、そうすると横領の存否に影響する。しかし本件手形を発見し、その使途先例えば被疑者が他に本件手形を割引きに出していることなどを手形の裏書きなどで特定できれば右弁解も排斥できるなど本件手形は本件捜査にとつては重要な証拠となる)。したがつて本件手形の発見及び本件手形の使途先の究明は本件にとつて重要であり、この点につき米田建設の関係者あるいは他に割引きに出した先の関係者などと通謀等して、手形の存否及び費消目的につき罪証を隠滅する虞が大である。

3 本件は被害者と藤本一志間の手形差し換えにも関係している。このことは前記の如く、本件手形が差し換え手形に使用されていることからも明かである。そして手形差し換えについては被害者と藤本との供述はそごしており、そのそごは被害者が差し換えとして被疑者に託した現金あるいは差し換え手形を被疑者が横領していることから発生している。そして右そごを解明することが本件横領の存否をも決する。即ち、被害者は五五年四月一〇日満期の手形と差し換えるべく被疑者に現金六〇万円と額面四三万円の手形とを託した旨供述しているが、しかしそれらは藤本に渡らず結局この時の差し換えは本件手形で補われており、右現金六〇万円及び額面四三万円の手形は被疑者に横領されている可能性が大である。そして右現金六〇万円及び額面四三万円の手形が勝手に被疑者が横領したということになれば、四月一〇日満期手形の差し換えのため被疑者ざ本件手形を差し換えたとしても前記一時使用の弁解は排斥できることから右現金六〇万円及び額面四三万円の手形の費消の究明は重要である。したがつて右現金六〇万円及び額面四三万円の手形の費消先と通謀等してその事実を隠滅される虞が大である。

三、以上述べたところにより被疑者に逃亡しまたは逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるほか罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があり、準抗告審による速やかな裁判の是正を求める。

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